口腔がんの集学的治療

舌、歯肉、頬の内側など、お口の中にできる悪性腫瘍であり、発生率はがん全体の1~2パーセントと低いものの、進行するとリンパ節や他の臓器に転移したり、食事が摂れずに衰弱してしまい、命に関わることのある重大な病気です。
口腔外科では、口腔内から、あごの下、首つけ根まで(頭頸部)の「がん」の治療を行い、周辺臓器(鼻の中、のどの奥、食道など)まで及ぶ場合は耳鼻咽喉科、消化器科、形成外科などの関連科と協力して治療します。

どんな人に多いか?

いわゆる「がん年齢」すなわち50歳以降に多いとされていますが、最近では30歳前後の患者さんも珍しくはありません。 口腔がんの発生は、煙草、お酒、香辛料などの嗜好(しこう)品や、合わない入れ歯やかぶせ物、歯並びなど、お口の中の刺激で増えるとされています。
歯以外の口の中どこにでも発生する可能性がありますが、できやすい部位は舌(35%)歯肉(30%)頬粘膜(15%)で、舌の側縁から下面が最も発生しやすい部位と言えます。
とくに煙草を吸う人、長い間歯医者さんに行ってない人は要注意です。

どんな症状がでるか?

初期では粘膜のザラザラ感や、白斑、紅斑など色の変化、食事がしみる、口内炎が治らないなどの症状で気づかれることが多いようです。進行すると大きくて深い口内炎(潰瘍)やカリフラワー様の固まりができたり、歯がぐらぐらする、入れ歯が合わない、ろれつが回らない、食事が飲みこみにくいなどの症状がでることがあります。
直接見たり(表面の色、かたちなど)、触ったり(硬さ、痛みなど)、反対側や他の人と比べると判る場合もありますが、診断は非常にむずかしいので、気になる場合は早めに口腔外科を受診しましょう。

どんな治療をするか?

口腔がんの治療は大きく分けて

  1. 手術で外科的に切除する方法
  2. 放射線をあてて治す方法
  3. 抗がん剤による治療

があり、これら3つを組み合わせて行います。

基本的には口腔がん治療のガイドラインに沿って、切除しても機能障害(しゃべれない、食べられないなど)が少ない場合(早期~中期がん)は 1. 手術を、切除すると機能障害が大きく出る場合(中期~進行がん)は 2. 放射線治療と 3. 抗がん剤の併用治療を行う場合が多くなります。当科では放射線診断科の協力で選択的動注療法を実施しており、治療効果が高く機能障害が少ない方法として注目されています。
どの方法にも長所と短所があり、「がん」の部位、大きさ、種類、転移の有無や患者さんの体の状態、仕事や家庭などの社会的背景も考慮して、充分相談した上で治療方針を決定しています。その際、他の病院へ相談(セカンドオピニオン)へ行って意見を聞いて頂くことも可能です。

口腔がんは治るか?

当科には毎年30~35人程度の口腔がんの初診患者さんが受診されます。
口腔がん全体の「5年生存率」は60%程度ですが、初期がん(stage I・Ⅱ)では90%以上
進行がん(stage IV)だと40%程度に下がることが報告されています。
この結果からも早期発見・早期治療により充分克服できる病気といえます。

当科の基本方針

当科では神奈川県歯科医師会と協力して行っている口腔がん検診をはじめ、藤沢市歯科医師会と連携をとり、口腔がんの早期発見・早期治療ならびに前癌病変の診断と治療に力を注いでいます。また、頭頸部がん治療のガイドラインや、医学的根拠(エビデンス)に基づいた治療を行っています。
近年は治療困難な進行がんに対しても、横浜市立大学・歯科口腔外科と協力し、放射線併用選択的動注化学療法・超選択的動注化学療法などの新しい方法を取り入れ、治療後のQOL(生活の質)を第一に考えた治療を心がけています。

対象の診療科

  歯科口腔外科

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