2010年12月10日号 広報ふじさわ…市民の広場  〔 1 / 1 page 〕

まちのわだい畑と食卓をつなぐ わいわい市から広がる夢

旬の味が店内いっぱいに並ぶ(写真はいずれもわいわい市寒川店)
旬の味が店内いっぱいに並ぶ
(写真はいずれもわいわい市寒川店)

個性それぞれの農産物「宝探し」の楽しさ

 寒川神社の近くにあるJAさがみの大型農産物直売所「わいわい市寒川店」では、寒川や藤沢などの生産者が育てた地場野菜を求めて、開店直後からお客さんでにぎわう。

 地場野菜なので安全・安心・新鮮という点が人気の理由だ。さらに事務局をつとめるJAさがみでは、「『宝探し』の楽しさがあると思います」と大型直売所ならではの魅力を話す。「たとえば量販店では『キャベツ1玉○×円』とひとくくりで売られますが、キャベツと一口に言ってもいろいろな品種があるし、さらに作り手によって育て方が違う。値段も、味も、食べ方も、ひとつひとつ違ってくるんですよ」。

 千切りにして生で食べて欲しいキャベツ、炒め物にするとおいしいキャベツ、あるいは農家だけが知っているおいしい食べ方など、店頭に掲げられたさまざまな情報とともに、消費者は農家それぞれの自慢の農作物を選ぶことができる。

 スーパーなどと違い、大安売りセールやチラシはない。それでも宝探しの楽しさにひかれてお客さんが足を運んでくれる。わいわい市での調査によると、来店者の85%がリピーターだという。

どうすれば売れる?生産の現場に活気

手作りの総菜も並ぶ
手作りの総菜も並ぶ

 「全国のいろいろな直売所と比べても、わいわい市の品質はトップレベル。生産者の努力の成果です」とJAさがみの菊地達也さんは太鼓判を押す。オープン当初から、生産者と二人三脚で売り場作りに取り組んできた。

 わいわい市では、商品の納品から値段の付け方まで、すべてが生産者に任されている。そして売れ残った野菜は、出荷した農家が引き取らなければならないルールだ。

 どうすれば売れるのか、JAさがみと各生産者は試行錯誤を重ねてきた。キュウリを売る時、袋詰めは3本と5本はどちらがいいのか。フキの茎を売る時、葉を1枚入れてみてはどうか。あるいは品質そのものを上げるためにはどうすればいいか。

 「『売り方』を意識することで、生産者側にも経営的感覚が育ってきた。今の若い人にとっては、楽しいと思いますよ」と菊地さん。

 わいわい市の売り上げは、生産者の収入にも直接つながる。「自分の農作物を自分の手で売る手応えに目覚めて、若手農業者が育っている」と菊地さんは目を細める。

 わいわい市藤沢店のオープンにあたり、店舗レジの売り上げ情報が生産者の携帯電話やパソコンで常時確認できるシステムを新たに導入する。売り場と生産現場の距離をさらに縮めて、地域農業の活性化につなげる。

いよいよ藤沢店オープン「地産地消の宝箱」に

こだわりが分かる店頭表示
こだわりが分かる店頭表示

 12月24日にオープンする「わいわい市藤沢店」は、隣に調理実習室と会議室を備えた産地形成促進施設や選果場なども併設され、都市農業の活性化拠点としての役割も担う。

 店長を務める佐藤洋さんは「地産地消の宝箱にしたい」と意気込む。地元農業を体験できる場として、地場野菜を使った料理教室、大学や企業との商品開発なども計画している。

 オープンに合わせて、地元産のタマネギや小麦粉を使ったこだわりのカレー粉を開発した。わいわい市の店頭でレシピを配布して、地場野菜づくしのカレーを堪能してもらおう、という試みだ。「材料に里芋やゴーヤを使ったカレーって知ってますか?季節ごとに地場野菜を使ったいろいろなカレーを提案していきます」と佐藤さん。

店長の佐藤洋さん
店長の佐藤洋さん

 藤沢店のオープンのために準備を重ねてきた佐藤さんは「お客さんは、作り手と話をしたいんです。生産者の側も、お客さんの声を聞きたいんですよ」と実感を語る。直売所には対話の場としての期待も大きい。

 わいわい市では、生産者が店内に入る時には、エプロンと帽子のユニフォームを身に付けることになっている。お客さんが気軽に声を掛けやすくするための、さりげない工夫だ。

 「どう食べたらおいしいですか?」と話を聞き、新しい発見を家庭へ持って帰れる楽しいお店。そんな「地産地消の宝箱」として、今年のクリスマスから夢は広がっていく。