2011年8月10日号 広報ふじさわ…市民の広場  〔 1 / 1 page 〕

まちの話題 子どもたちに歌と拍手と感動を 劇団四季「こころの劇場」

劇団四季「こころの劇場」

一流の舞台芸術を子どもたちに届けたい

 6月16日、17日、市立33校の小学6年生が、ミュージカルを観るために市民会館に集まった。劇団四季が北海道から沖縄まで全国を巡回して小学生を無料で観劇に招待する事業「こころの劇場」のためだ。

 「こころの劇場」は、舞台芸術を通して、人が生きていく上で大切なものを伝えたいという理念からスタートしたプロジェクト。文部科学省や各企業が後援・協賛を行い、活動を支えている。藤沢市では市制施行70周年の記念事業として昨年はじめて実施され、好評を受けて今年度も小学6年生の観劇が決まった。

 今回の演目「はだかの王様」は、アンデルセンの原作をもとに詩人・寺山修司が若き日に脚本を書いたミュージカルだ。演出・構成を浅利慶太、作曲をいずみたくが手掛けたほか、振り付けや衣装デザイン、音響・照明などにも劇団四季ならではの一流の創作陣がそろえられている。

みんなで一緒に手を叩いて歌おう

 舞台の冒頭、案内役の登場人物が客席の子どもたちに向かって「みんなで『幕を開ける歌』を歌おう」と呼び掛ける。その場でメロディーに乗って歌と手拍子のタイミングを練習し、次第に会場いっぱいの子どもたちの歌声がひとつになっていく。

 「幕の後ろでスタンバイしている私たちにまで大きな声が聞こえてきて、舞台を楽しみに待っててくれたのかな、とうれしかったですね」と、主役の王様を演じた岡本隆生さん。「はじめは恥ずかしそうにしていた子も、最後にはみんなと一緒になって合唱している姿を見ると、この舞台に出演できてよかったと思います」と語る。

 子どもたちの歌声が最高潮に達したところで幕が開くと、アンデルセンの物語の世界。「正しいことを『正しい』と言える勇気の大切さ」が、音楽とダンスで軽快に描かれる。家来を振り回すおしゃれな王様、どこか憎めない詐欺師のコンビ、真実の恋を貫こうとする可憐なお姫様など、個性的な登場人物がストーリーを進めていく。

 物語のクライマックス、裸になった王様が国中を練り歩くシーンでは、俳優たちが観客席へ降りて大騒ぎ。物語の世界の国民と同じ気持ちになった子どもたちが、裸の王様を前に笑いや歓声を上げた。

 2時間以上におよぶ長い時間にも関わらず、子どもたちは最後までマナーを守って観劇。カーテンコールでは拍手が鳴りやまなかった。

作品の感動をこころの宝物に

作品の感動をこころの宝物に

 終演後、友達同士で歌を口ずさみ、にぎやかに帰途につく子どもたちを眺めながら、長後小学校の有田校長は、目を細めていた。「自分に置き換えて鑑賞している姿が印象的でした。芸術は人生の如し―6年生ともなると、ひとりひとりの感じ方も違ってくるんですね」と同校長。「主催者はもちろんのこと、後援者の方々にもお礼を申し上げたい。子どもたちの笑顔を作りだして行くために、手を借りたいと思います」と事業を成功に導いた関係者の苦労をねぎらった。

 教室に帰った子どもたちの作文には「あこがれのミュージカルをみることができて、面白かった」「みんなで手をたたいたり、うたったりしてたのしかったです」「服がとてもカラフルでした」など、素直な言葉がつづられた。

 クラスメートのみんなと観た、はじめての本格ミュージカル。みずみずしい感性に刻んだ感動が、「こころ」の宝物となっていくに違いない。