2011年12月25日号 広報ふじさわ…市民の広場  〔 1 / 3 page 〕

まちの話題

技を尽くすふじさわの匠

〜藤沢市技能職団体連絡協議会

 婦人服や子供服の仕立てをして40年。若林克巳さんは、特級洋裁師(ドレスメーカー)として、長後で「ファッション ソーイング 若林服装」を営む傍ら、現在、藤沢市技能職団体連絡協議会の会長を務めている。

藤沢市技能職団体連絡協議会の輪をさらに広く

 藤沢市技能職団体連絡協議会は1975年、技能職者の技能、社会的地位の向上および後継者の育成を目的として設立された。2011年4月現在、市内34職種36団体の組合が加盟し、衣・食・住・生活の各グループから成る。衣は染め物業や縫製業、食は飲食関係、住は建築関係、生活は理容・美容、クリーニング、印刷業などが属している。

 また全国技能職団体連絡協議会は本市を含め、川崎・大阪市など全国14都市の技能職団体で構成され、全体会議などを通じて、技能職に関するさまざまな課題の解決に努めている。

 若林さんは活動の目的を「協議会に加盟する団体の職業はどれも市民生活に密着しているものばかり。そこで自分たちの技術をどのように提供したら、市民の方の生活が豊かになるのかを討議することです」と語る。

 技術に関する展示会・職業訓練・ボランティア活動などで技能職団体の認知度を高める活動に尽力する一方、今後は小・中学校に出向き、子どもたちに仕事を見せることで、職人という職業に少しでも興味を持ってもらえればと考えている。また、来年度から本市にもマイスター制度(※)を立ち上げて、毎年何人かのマイスターを選定することを検討中だ。

 「若者の就業率が低迷する中、職人という仕事が一つの選択肢になれば」と、一人でも多くの若者が職人の門をたたいてくれることを期待している。

 本市の場合、技能職団体への加盟数は他市に比べ、まだまだ少ないという。「市内には、素晴らしい技術を持った職人がたくさんいます。ぜひ協議会に入って、その技術を披露してくれればと思います。自動車整備士やフラワーアレンジメント、IT関連の技能職団体にも入ってほしいですね。できれば藤沢の特色でもある漁業や農業関係の方々にも加盟していただきたいです」と若林さん。

本職の洋裁師として

 若林さんが洋裁の道に進んだのは25歳の時。大学卒業後、数年の会社勤めを経て、父が経営する婦人服の製造業を継ぐ決心をした。それからというもの必死で服飾についての知識を学び、洋裁に関わる全ての資格を取得したという。

 例えば、技能検定2級の実技はワンピース2着を7時間で完成させるというもの。学科では生地の種類や服装の歴史、化学(染めや染み抜き)、機械の保全などを学び、特に針と糸の種類に関しては詳細な知識が求められたという。「針と糸の選択を間違えると素材を傷めてしまいますからね」と、この期間に洋裁の技術と知識を体にたたき込んだ。

 絶えず顧客の要求に応えていくためには、当然、流行のファッションや技術についても学ばなければならない。そういう意味では、毎日が修行の連続だという。

必要なのは創意工夫とあきらめない精神

 この仕事の醍醐味はお客さんの反応の良し悪しが直接伝わってくることだ。「独自の創意工夫でさまざまな問題を乗り越えていくこともできます。例えば、飾りリボンをくしゅくしゅに縮めて縫いつけるのに、自分で治具を工夫したり、バイアスに切ると伸びやすい布の裁断方法を考えたり。あきらめたらそこで終わりです。お客さんもほかにいってしまいますからね」と若林さん。時代の流れとともに変わる顧客のニーズに答えるため、絶えず技術を磨かなければならないので、苦労もたくさんあるという。

 一方で、「月並みですが、お客さんの喜んだ顔が見られることが、何よりのやりがいです。仕立て上げるのがどんなに大変でも、お客さんのうれしい顔が返ってくると、それまでの苦労なんか全部吹き飛んでしまいます」と笑う。

 「手に職があれば食べることに困らない。技は身を助くということを伝えたい」。職人としてのやりがいはもちろん、妥協しない精神を伝え続けている。

 ※マイスター制度…ドイツ発祥の職能訓練制度のことで、近年、日本でも熟練技能者から中堅・若手人材へ技能を継承をするための仕組みとして、注目されている

藤沢駅北口地下道展示場で行われた技能展の様子
藤沢駅北口地下道展示場で行われた技能展の様子



技能まつりに参加した協議会の皆さん
技能まつりに参加した協議会の皆さん

自宅の作業場でミシンをかける若林さん 若林さん
自宅の作業場でミシンをかける若林さん