2012年2月25日号 広報ふじさわ…市民の広場  〔 1 / 3 page 〕

藤沢の匠たちの技に触れる

“ザ・職人”技能展

3月6日(火)〜15日(木) 藤沢駅北口地下道展示場



 私たちの衣・食・住・生活を支える職人たち。技能者の技術の向上や後継者の育成を目的として設立された「藤沢市技能職団体連絡協議会」に所属する匠たちが、長年の経験で培った技を駆使し制作した作品や、作業で使用する用具などを陳列・紹介する「第21回“ザ・職人”技能展」が開催されます。ぜひ足を運んで、その卓越した技術に触れてみてください。

展示作品

☆和服のリフォームドレス・ビスクドールの展示〈洋裁組合〉

☆盆栽の展示〈造園組合〉

☆銘菓・和菓子紹介〈菓子工業組合〉

☆イ草手工芸品・置き畳などの展示〈畳組合湘南〉

☆電気工事士の作品展〈電気工事工業組合〉


問い合わせ

勤労市民課【電話】(50)8222、【FAX】(26)8839



まちの話題

スイーツで地域を活性化

地産地消の熟練パティシエ


 今も昔も、誕生日やクリスマスなどの特別な日に欠かせないケーキ。一口食べただけで、言葉にならない幸福感をもたらしてくれるケーキを50年以上も作り続けている渡部昭さんは、高谷で『シユテルン洋菓子店』を営む傍ら、藤沢市技能職団体連絡協議会の副会長を務めている。

 「協議会は職人たちの交流の場です。私は洋菓子職人ですが、大工や畳職人がいたりと分野が違う者同士が刺激しあって、技術や物作りへの情熱を互いに高めています」


洋菓子作りに没頭した青春時代

 山形県出身の渡部さんが洋菓子職人を志したのは中学生の頃。「近所の町に洋菓子店があり、真っ白な白衣を着た職人さんがどら焼きを焼いていました。その姿がとても格好良く、『この仕事がいいな』と思いました」。

 15歳で洋菓子の世界に入り、20歳で上京し出会った高円寺の洋菓子店でその真の魅力に目覚めた。「社長が洋菓子協会連合会の会長で、フランス菓子の第一人者でした。この店で当時では珍しかった生クリームを使った生菓子を学びました」。

 20代の大半を修行に費やした1960年代は、まだフランス菓子に関する情報も少なかった。渡部さんたちはフランス語の本を入手しては翻訳家にレシピを訳してもらい、見たこともないケーキを試作した。「毎日が楽しくて仕方なかったです。大変でしたが、飽きることがありませんでした」。


憧れの街、藤沢で夢の洋菓子店を開業

 「中学校の修学旅行で東京と鎌倉、江の島を訪れました。湘南の海辺の街は、夢のような場所でした」と渡部さん。東京を離れ中学時代からの憧れの地だった藤沢の洋菓子店で働くことが決まったときは、「これも縁だなと思いました」。

 『シユテルン洋菓子店』を開店したのは今から27年前。「星の数ほどお客さんが来て欲しい」との願いを込めて、店の名前をドイツ語で「星」を意味する『シユテルン』と命名した。開店当時、店の周辺は空き地が多かったということもあり、「おしゃれなケーキ屋さんが出来た」と物珍しさで評判が口コミで広がり、店は賑わっていた。「地域のお客さんに好まれる物を作るようにしています」と、素材にこだわった安心・安全なケーキや焼き菓子は、創業時から変わらず地元の人たちに愛され続けている。


藤沢産の食材で新たな課題に挑戦

 渡部さんは自分が住んでいる県や市の特産物、それらが育つ素晴らしい土地のことを多くの人に知ってもらいたいとの思いから、湘南ゴールドや津久井大豆など神奈川県産の食材を積極的にスイーツに取り入れている。足柄産の抹茶や、ギャバ茶を使った3種類の焼き菓子『マルキーズ、ギャバフリン、ダックワーズ』は、農林水産省と経済産業省により地元の食材を使った優良品「農商工連携88選」に選ばれた。また、市制施行70周年を記念して作られた『カワセミくんサブレ』は試行錯誤の末に完成した。県内の米粉を使用し、サクッとした口当たりで「おもたせの品」としても評判が高い。

 これからを聞かれ、渡部さんは少年のような真っ直ぐな眼差しで強く語った。「夢は藤沢産の食材を使った、誰からも好まれる洋菓子を作ることです。使い方次第でおいしい菓子になる農作物はありますが、収穫時期があるので常時同じ物を提供できないという問題があります。それでも愛する藤沢の名が全国に広がればうれしいので、職人魂を込めてチャレンジし続けます」。


驚きの早さでデコレーションケーキを美しく仕上げる

驚きの早さでデコレーションケーキを美しく仕上げる。これぞ匠の技だ。


カワセミくんサブレ

市の鳥をモチーフにした『カワセミくんサブレ』


「農商工連携88選」に選ばれた3品

「農商工連携88選」に選ばれた3品