路可はその生涯において実に様々なジャンルの作品を描きました。1921(大正10)年、東京美術学校(現東京藝術大学)の日本画科を卒業し、すぐにフランスに渡ります。そして油彩画をサロンに出品するかたわら、欧州の博物館に保管されていた西域発掘の古い仏教壁画の模写に従事。その経験から壁画への関心を深め、フレスコ画の技法も身につけて1927(昭和2)年に帰国しました。以後10年間は藤沢市の鵠沼にアトリエを構え、日本画を追求するほか、教会や劇場などの壁画を制作。日本に本格的にフレスコやモザイクを伝えたパイオニアとして評価されています。
若き日に日本画、西域壁画、油彩画、フレスコ画に触れ、洋の東西をまたいで古から今日までの技能を磨いたことは、その後の路可の画業に豊かな広がりを生みました。よって本展では、多彩な路可の制作活動の中でも滞欧時代(1921-27年)に焦点を当て、市所蔵作品を中心に彼の足跡をたどります。
さて、路可の作品は制作から100年近くが経過し、画面に傷みが生じていました。そこで今回、市では《自画像》を含む6点を修復し、その工程とともにお披露目します。作品を守り後世に伝えていくという点では、冒頭に述べた旧国立競技場のモザイク壁画の移設も同じです。美術作品の保存と継承の裏には、多くの手が差し伸べられていることを知っていただければ幸いです。
Hasegawa Loka (1897-1967), an artist who lived in Fujisawa, is regarded as a pioneering figure responsible for formally introducing Fresco and Mosaic techniques to Japan. In 1964, he made a pair of large Mosaic murals at the former National Stadium, which was the main venue for Tokyo Olympics. The murals have been relocated and are now available for viewing at The Japan National Stadium. After studying Japanese painting, he then moved onto Europe (1921-27). While exhibiting his oil paintings at the salons, Loka also worked on copying the Buddhist murals of Central Asia, exploring various kinds of painting techniques – East and West, old and new. This exhibition mainly introduces the Fujisawa city collection of artworks from his youth, along with their restoration process.