「岩手・宮城・福島観光物産プラザ」の2年8カ月 商品一つ一つが、復興の架け橋
東北の小さな企業から届く自慢の商品たち
ごはんのお供にぴったりの福島県いわき市の漬物「しそ巻き」、2種類のチーズの濃厚な風味がたまらない宮城県女川町のかまぼこ「淡雪チーズ」…藤沢駅南口のフジサワ名店ビル中2階にある「岩手・宮城・福島観光物産プラザ」には、東北3県発の珍しい商品が並んでいる。
2011年8月のオープン当初から、「東日本大震災で被災した東北の中小企業の復興支援」が同プラザの目標のひとつ。有名な土産物などはあえて置かず、小さな企業の名品にこだわってきた。
売り上げは、経費を除いて全額が被災企業へ送られる。藤沢で売られた商品が、東北の企業で働く人たちへ活力を届ける仕組みだ。
「コレ知ってる?」お客さんと売場づくり
おすすめの商品を手にする 田代さん(左)と小林さん(右)
5人のスタッフ全員が福島県からの避難者。流通の専門家ではないスタッフの店づくりを支えたのは、お客さんたちの声だった。
「わたしの故郷においしいものがあるんだけど、知ってる?」「ボランティアで東北に行ったときに知ったお店の商品、手に入る?」という話を聞くと、店員がインターネットなどで詳細を調べ、直接連絡を取って交渉する。
地道に仕入れ先を開拓してきた結果、初めは50種類ほどだった商品が今では150種類以上に増えた。震災の影響で流通ルートがなくなり、関東地方で商品を卸しているのは同プラザだけというメーカーも少なくない。
「復興担っているんだな」ママ店員の笑顔
▲閉店イベントの様子
「『おいしいものしか置いていない』という自信があるので、お店の仕事は楽しかったです」と話すのは、スタッフの1人、田代宏美さん。
福島県白河市に住んでいたが、自主避難で3歳の子どもを連れて藤沢へやってきた。神奈川県に住むのも本格的に接客業に携わるのも初めての経験だったが、「お客さんやメーカーの方とお話をすると『復興を担っているんだな』と強く感じました」と笑顔で振り返る。休日には、夫と子どもの3人で江の島や地域のお祭りに出掛けて藤沢の生活を楽しんでいる。
ちなみに、田代さんのおすすめは「まきば村のバターせんべい」。国内産バターの風味を効かせた、優しい味の南部せんべいだ。
これからも支援の輪を「ちょっと思い出した時に」
▲今までの感謝を込めて リンゴやトマトのプレゼントも
3月20日で同プラザは終了。先日行われた閉店イベントには、いわきや八戸からも商工会議所のスタッフが参加し、これまでの支援に対する感謝の言葉が伝えられた。
オープン当初から同プラザで働いてきた小林絵美子さんは「お店は終わりますが、これからもデパートの物産展などで東北3県の商品に出会う機会があると思います。そんなとき、うちのお店で見つけた商品をちょっと思い出して買っていただけるとうれしいです」と現在の想いを語る。
「『被災地支援』というより、『前に観光物産プラザでおいしいものを見つけたな』と気軽にリピートしていただけたら、また支援の輪が広がるかな」
震災から3年を迎える春。一つ一つの商品が積み重ねた縁が、これからも復興の架け橋となっていく。
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