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公募

【入選者発表!】制作・展示支援プログラム「Artists in FAS 2025」

制作·展示支援プログラム「Artists in FAS 2025

8月31日に、Artists in FAS 2025の入選アーティストを選出する審査会を行いました。

審査員の笠原恵実子氏と田中みゆき氏が滞在制作および作品プランが記入された応募書類等に目を通し、それぞれ十数名程の候補者を選出しました。その候補者の中から審査員が協議し、4名の入選者が決定しました。

 

◼︎入選(敬称略、50音順)

小山友也(こやま・ゆうや)神奈川県在住

dabada(だばだ)群馬県在住

平松可南子(ひらまつ・かなこ)東京都在住

Lvdiankk(りょてん)東京都在住

◼︎応募件数

58件 [神奈川県内21件(うち藤沢市3件)、神奈川県外36件、未記入1件]

◼︎審査の様子



「Artists in FAS」とは

「Artists in FAS」(以下、AiF)は、藤沢市アートスペース(以下、FAS)が実施するアーティスト・イン・レジデンス・プログラムです。本プログラムは2016年にスタートし、今年で10回目を迎えます。

FASで制作する作品と展示についてのプランを広く募集し、外部審査員による審査のもと、選出されたアーティストには作品制作と展示のための環境を提供します。アーティストとしてこれまでに追求してきた表現や培ってきた経験を、FASでの滞在制作を通してカタチにしてみませんか。絵画、立体、インスタレーション、パフォーマンス等、表現ジャンルは問いません。

「AiF」は、アーティストの意欲的な創作活動をサポートするとともに、発表の場を提供し、今を生きるアーティストとその作品の魅力を発信します。


<審査員>

笠原恵実子氏[美術家/多摩美術大学教授]

多摩美術大学大学院美術研究科修了後、1995年から2014年までニューヨークを拠点として活動。2014年から多摩美術大学彫刻学科教授、東京を拠点に活動。初期は大理石やシリコン、人工毛髪といった無機質な素材を用いた彫刻や、女性の身体を扱った写真やビデオ、又はそれらを組み合わせたインスタレーションでジェンダーと物質主義の関係を探る制作を発表。近年では年月をかけたフィールドリサーチを行い、その行為と記録から彫刻や写真を複合的に扱い制作、宗教・人種・セクシャリティーなど潜伏的な制度を問う作品を発表。主な収蔵先に東京都現代美術館、京都国立近代美術館、栃木県立美術館、原美術館、ドイツ銀行、クイーンズランドアートギャラリー(オーストラリア)、イブ・クライン財団(アメリカ)、ピーター・ノートン財団(アメリカ)、フォッグアート美術館(アメリカ)、カンターアートセンター(アメリカ)、バークレー美術館(アメリカ)など。


 2025 Artists in FASの選考に携わって気付いたのは、海と結びつけたプランが多いことだった。海岸線を有する藤沢市を意識した結果だろうが、自身の制作との関係性が見えない場合も多く、本末転倒な気がした。対して、選ばれた4名の方のプランは過去作品との連続性の中で考えられ、コンセプトがしっかりとしたものであった。

 小山友也さんのプランは、「有害な男性性が男性にとっても有害であること」がテーマの数々の行為を、映像や立体オブジェ、テキストによって構成するインスタレーションで、展示が可視化できる明解な内容だった。「有害な男性性」への問題提起は、フェミニズムの文脈からは多くされてきたが、そこから恩恵を受け得る同性によるものは限定的だ。個人的にも、ここ最近、弱者男性と自称する、または他称される人々が、ミソジニー化していく傾向を見ることがあり、男性性がいかに厄介かを考えた。この展示がどこまで切り込めるか、注目している。

 リョ·テンさんのプランは、戦時中存在した海軍藤沢飛行場にまつわる記憶と、現在の海浜住宅地周辺の日常を、散歩という身体的行為を介して一つの空間に紡いでいく内容で、藤沢市固有の文脈でありながら、過去/現在、戦時/平時を基とした、普遍性を持ったインスタレーションとなる可能性を感じた。これまでの制作は、廃遺物や枯れた植物、そこから滴り落ちる水を配したディストピア的世界観のインスタレーションで、香港プロテスト時の言葉「Be Water」(水のように柔軟に戦え)を想起させるものだった。今回の新たな展開も是非みたいと興味を持った。

 川松康徳さんと山本信幸さんのユニットdabadaのプランは、ベルリンの壁崩壊後、誰もが描いた自由と開放の世界が、実際には抑圧や排除のために壁を建設する時代となってしまった事を踏まえ、レジデンスルームに壁を作り、その壁を介するイベントや内田望美さんのパフォーマンスを行う、その一連の行為と派生する状況全てを作品とする内容だ。作品の制作プロセス自体が開かれており、訪れる人々との会話や関係性によって、作品もまた影響を受けることとなり、多彩な展開に期待している。個人的には「壁を壊す」も作品に入れて欲しいと思っており、是非伺いたい。

 平松可南子さんは、絵画の手法を用いながら、絵画には収まりきらない視点や動きを捉えようと挑戦をされてきた方で、今回のプランにも、絵画の拡張性を強くみられた。二つの大きな絵画が、上面で支え合うように自立し、人が通れる構造を作る内容なのだが、絵画には最初から小さな穴が多数開けられており、表/裏の境界が無化されている。また、色面が内側を向いて自立しているため、正面を鑑賞することは不可能である。従来の絵画鑑賞方法を覆し、絵画を脱構築しようという試みの末、得られるイメージや体験とは何か。共有スペースで行われる展示で確かめたい。

 以上3人と1組のアーティストたちの藤沢市アートスペースでの制作が、素晴らしい経験となる事を心から願っている。


田中みゆき氏[キュレーター/プロデューサー]

「障害は世界を捉え直す視点」をテーマに、カテゴリーにとらわれないプロジェクトを企画。表現の⾒⽅や捉え⽅を鑑賞者とともに再考する。 2022年ニューヨーク⼤学障害学センター客員研究員。主な仕事に、「ルール?展」(21_21 DESIGN SIGHT、2021年)、展覧会「語りの複数性」(東京都公園通りギャラリー、2021年)、「⾳からつくり、⾳で遊ぶ。わたしたちの想像・創造を刺激する『オーディオゲームセンター +CCBT』」(シビック・クリエイティブ・ベース東京、2024年)、『⾳で観るダンスのワークインプログレス』(2017-2020年)など。 主な著書に、『誰のためのアクセシビリティ? 障害のある⼈の経験と⽂化から考える』(リトルモア)、『ルール? 創造的に生きるためのデザイン』(共著、フィルムアート社)がある。


 まず冒頭で触れておきたいのは、この公募が特定のテーマを設けていないにもかかわらず、「藤沢」という土地柄からか、海を題材とした応募が非常に多かった点である。藤沢市アートスペースは海に隣接しているわけではないが、毎年のように海にまつわる企画が寄せられる状況があると思われる。その結果、既視感を伴う提案が少なくないのも事実である。ゆえに今後の応募者には、海という題材をあえて避けるか、あるいはその表層的なイメージを超えて、社会的·歴史的背景や個人的経験を通じた新たな切り口を提示することが求められるだろう。そうした状況の中で、今回選ばれたアーティストたちは、自らの身体感覚や社会的経験を出発点に、地域や歴史、他者との関わりを深く掘り下げた点が際立っていた。

 小山友也は、自らが男性であることを前提に伝統的男性性の規範が男性自身をも苦しめる構造に切り込み、それが個人の身体に与える影響を可視化しようとしている。近年、フェミニズムの広がりにより、男性のふるまいは従来以上に問い直されるようになった。同時に、男性自身が規範に縛られ、時に加害と被害の双方を生きざるを得ない矛盾した現実も顕在化しつつある。労働環境や社会の中で生じる抑圧が、自己を守るために他者を支配するふるまいへと転じてしまう構造は、社会に根強く残っている。交番の前に立ち尽くす男性や友人の語りといった具体的な観察を出発点に、映像やパフォーマンスへと展開する小山の試みは、時代的課題に応答しつつ、個人としてどう生きるかを問うアートの想像力を強く示すものとして評価できる。

 dabada(川松康徳+山本信幸)は、「壁」というモチーフを通して、権利や自治をめぐる緊張を体感的に可視化する実践を行っている。9.11以降、国境管理や監視体制が強化されるなかで、壁は安全保障や排除の象徴へと変化した。さらにコロナ禍ではロックダウンやソーシャルディスタンスが日常生活を制約し、社会的孤立や格差の拡大を生み出した。現在も、戦争や移民問題を背景に新たな物理的·心理的な壁が築かれ続けている。こうした文脈において提示される仮設壁は、社会の緊張や力の作用を映し出す表象として現代的な意義を持つ。同時に、壁越しに声をやり取りし、協働の可能性を探るという試みは、単なる批評に留まらず、対話の場を生成する実践として高く評価できる。

 呂典(Lvdiankk)は、「散歩」という方法論を用い、藤沢市に残る歴史的痕跡と現在の日常風景を重ね合わせる映像インスタレーションを構想している。旧海軍航空隊の跡地や工場群、そこに残された防空壕や錆びついた門といった痕跡は、地域固有の記憶を物語る。一方で、海辺の住宅地に並ぶ簡易な屋外シャワーは、サーフィン文化や日常生活のリズムを象徴するものだ。呂典の企画は、過去の記憶と現在の暮らしを等価に扱い、歩行という行為によって両者をつなぐ点に独自性がある。霧幕を投影面とし、環境音や回収した物品を組み合わせたインスタレーションは、鑑賞者に空間を移動しながら複層的な空間体験を促し、歴史と日常の交差を感覚的に実感させるものとなるだろう。

 平松可南子は、水の循環や噴水の飛沫といった絶えず変化する現象をモチーフに、絵画の平面性や境界性に問いを投げかけてきた。提案されたミシンで糸を通さずに穴を開ける手法は、絵画の表裏をつなぐことで、従来の正面性を相対化し、新しい絵画体験を生み出す。光や影が穴を通じて介在することで、作品は単なる視覚像に留まらず、時間性や空気感を孕んだ空間へと拡張する。静謐な佇まいの中に変化と持続の関係を内包した作品は、公共スペースにおける展示においても、鑑賞者の体験を豊かに拡張する可能性を秘めている。

 総じて、今回選ばれたアーティストたちは、自己の身体や生活実感を起点にしながら、社会的な課題や地域固有の歴史を掘り下げ、他者との関係を再構築する姿勢を共有している。それは単なる自己表現を超え、他者とともに生きるための新たな視点を提示する営みである。アートが持つ批評性と同時に、ともに経験を分かち合う場を生み出す力が、これらの作品群には強く息づいている。


<審査>

審査員が書類選考によりすべてのプランに目を通し、以下の項目に基づき協議して入選 4名(組)を決定。

  • 作品のクオリティについて
    ・独創性に富んでいるか ・実験的な試みに挑戦する姿勢があるか ・将来性があるか
  • 展示会場との親和性について
    ・会場構成に工夫がみられるか ・会場の選択理由に説得力があるか
  • 交流イベント(ワークショップ等)について
    ・積極的に他者と交流し、自作の魅力を伝えようとしているか

※審査内容についてのお問い合わせには応じられませんのでご了承ください


<募集期間>

2025年7月1日[火]~2025年8月11日[月・祝]


<応募締切>

2025年8月11日[月・祝]17:00必着


<入選>

4名(組)

入選者(組)には、滞在および制作補助として45万円を支給します。

※支給方法:事業終了後に本人名義の口座へ振込みとなります。


<滞在制作期間>

2025年10月1日(水)〜12月27日(土)

※上記期間中、30日以上(1日6時間程度/9:00〜19:00の間)FASで滞在制作をすること
※別途、展示設営期間あり


<展覧会>

2026年1月10日(土)〜2026年3月15日(日)

※入選者によるグループ展です。
※休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日が休館)
※開館日や閉館時間は変更になる場合があります。


<応募方法>

◉募集期間内にEmail、郵送(宅配便等も可)、FASへ直接持込のいずれかの方法で、「藤沢市アートスペース〈Artists in FAS 2025〉申込用紙」を提出してください。

募集期間: 2025年7月1日 [火]〜8月11日 [月・祝]

Email  8月11日 [月・祝]17時まで ※締め切り間際は回線が混み合うことが予想されますので早めの応募をお勧めします

郵送  8月11日 [月・祝]必着

直接持込  8月11日 [月・祝] 17時まで(開館日の10〜17時で受付)

※データや書類の不備等がある場合は審査できません。再提出する場合、締め切り日時以降の受付はしませんのでご注意ください。

◉応募の際は、以下要項を必ずご確認ください
AiF2025募集要項(PDF)

〈応募に関するQ&A 〉


<申込書類>

こちらからダウンロードできます。 ※FASでも配布しています。

AiF2025申込用紙(PDF)

AiF2025申込用紙(docx)

※PDF、docxはどちらか使いやすい方をお使いください。

応募は一人(組)一件とします。

申込用紙のフォーマット(A4サイズ10ページ)を使用してください(縦横不問)。

映像の場合、5分以内に編集したものをYouTubeなどの動画サイトにアップロードし、動画のタイトルと閲覧可能なURLを申込用紙に明記して下さい。アップロードの際、動画タイトルには必ず応募者名またはグループ名を入れ(例:《FUJISAWAYOSHIKO_私の休日》)、プライバシー(公開)設定は「限定公開」としてください。

・DVDやCD等記録メディアでの画像や映像の提出は受け付けません。

[応募に関する注意事項]

・Emailで提出する場合、申込用紙(ポートフォリオ含む)は7MB以内にまとめ、PDF形式で保存してメールに添付してください。また、ファイル名には必ず応募者名またはグループ名を入れてください。
(例:〈FUJISAWAYOSHIKO_AiF2024申込用紙〉)

・申込用紙は返却しません。


〈参考図面・画像〉

展示場所はFASの展示ルーム、レジデンスルーム、ココテラス湘南ビル内共用部分のいずれかになります

【参考図面】
レジデンスルーム・展示ルーム図面(PDF

 

【参考画像】

左、展示ルーム(約200㎡)、右、レジデンスルーム(約138 ㎡)の画像

左:展示ルーム(約200㎡) 右:レジデンスルーム(約138 ㎡)

ココテラス湘南ビル共用部分の参考画像

ココテラス湘南ビル共用部分(一例)


〈応募書類提出先〉

[Email]fj-art2@city.fujisawa.lg.jp ※件名は「Artists in FAS 2025 応募//氏名」としてください

[郵送・持込]〒251-0041 神奈川県藤沢市辻堂神台2-2-2 ココテラス湘南6F
藤沢市アートスペース「Artists in FAS 2025」係


〈応募に関する問合せ先〉

[TEL]0466-30-1816

[Email]fj-art2@city.fujisawa.lg.jp
※件名は「Artists in FAS 2025問合せ」としてください

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