グルメ漫画のエポック的作品、『包丁人味平』。作画を担当し、原作者とともに作り上げたのは、藤沢に長年住み、地元民に愛されるビッグ錠です。
『包丁人味平』の連載が始まったのは1973年。高度経済成長がピークに達し、庶民の外食も当たり前になってきました。作中で繰り広げられる料理人の対決は読者の目に魅力的に映ったことでしょう。
味平の連載がスタートする1年前に誕生した風間サチコは、漫画に影響を受けた作風で社会風刺を一色刷りの木版画で描きます。両者に共通項はないように見えますが、日本経済が豊かになる一方で起きた様々な問題や閉塞感を描く風間の作品は、『包丁人味平』の世界とは表裏一体の時代の側面を反映し、社会を多角的に見せます。二人の共通項は「戦争」にも。幼少のビッグ錠自身をモデルとした漫画『風のゴンタ』では、戦後の子どもたちが力強く生きる姿が描かれます。風間は、飼育していたドジョウをモデルに、兵隊を『ドジョ戦記』でシニカルに描きます。
黒いインクの漫画、一色刷りの木版、白と黒で構成される二人の作品を、熱気があった時代を振り返りながら展開します。今年は戦後80年、平和を祈るとともに、本展が未来を見つめる一助になることを期待します。
【展示構成と主な出展作品】
第1章 高度経済成長の熱気
高度経済成長における熱気と、それによって見落とされがちな社会のひずみについて作品を通して見る試みです。
ビッグ錠『包丁人味平』、『釘師サブやん』
風間サチコ《人外交差点》、《黒い花電車-僕の代(破沈狐)》、他
第2章 エネルギーの白と黒
高度経済成長期に多くのインフラ整備が急速に行われました。
本章ではインフラ整備の熱気の向こう側にある人々の営みやその代償を捉え、私たちが現在当然と考えている
生活や、社会、経済システムを今一度考え直す機会を与えてくれます。
ビッグ錠『発電ドクター走る!』『電気ロード見聞録』
風間サチコ《クロベゴルト》シリーズ2作品《The 2nd sun island》、他
第3章 ふたりの視点-戦争
今年は第二次世界大戦終結から80年。薄れる人々の記憶を手繰り寄せる必要を感じる社会情勢の中で、
2人がどのような視点から戦争を描いているか見ていきます。
ビッグ錠『風のゴンタ』(紙芝居)
風間サチコ《ドジョ戦記》、他ドローイング作品
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