【審査員/審査評】
宮永 愛子氏 [美術家]
1974年京都市生まれ。横浜市在住。2008年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。日用品をナフタリンでかたどったオブジェや、塩や葉脈、陶器の貫入音を使ったインスタレーションなど、気配の痕跡を用いて時を視覚化する作品で注目を集める。2013年「日産アートアワード」初代グランプリ受賞。主な個展に「life」ミヅマアートギャラリー(東京、2018)、「みちかけの透き間」大原美術館有隣荘(岡山、2017)、「宮永愛子:なかそら―空中空―」国立国際美術館(大阪、2012)など。今後の主な予定として「瀬戸内国際芸術祭2019」参加。
7月に高松市美術館(香川)で個展を開催予定。
【審査コメント】
夏に向かう日差しの午後、ビルの6階から見下ろす街並みは、周りに高い建物がないせいか、ずいぶんと広くゆったりと感じられました。本当はそのすぐ向こう側に海があるのですが、そのことよりも、子育て世代を意識したであろう街づくり、多くの家族が快適に暮らしている様子がうかがえました。なぜこのように審査日の景色の体感を書いたかというと、この公募展にはレジデンスと展示という、ふたつの側面があり、特にレジデンスにとっては、それを体験する地域や場所との関係性がとても重要だと感じたからです。応募された方々がこの街の持つエネルギーとどのように向き合おうとしているのか、そして大きな窓から陽の光が差す展示空間の可能性をどのように引き出そうとしているのか、そんなことを想像しながら審査を進めました。提案された展示内容の中には、すでにたくさん活動されている方の緻密で面白いと思うプランがいくつもありました。でも港さんと話し合って、みなさんのことを見送りました。同じ作家としては、いつでもチャレンジしたいという気持ちはよくわかるので、面白いものは見てみたいとも思いました。けれどもこの街とこちらのスペースには「あたらしい世代の挑戦」というイメージがあり、ここはひとつこれまで発表の機会が少なかった方にこそ相応しいのではないのではないかという話し合いに至りました。
下大沢さんは大きな規模のコンクリートでの彫刻作品、国分さんの日本の美術教育に縛られない独特なやわらかさ。人選者の中で唯一、藤沢の景色が映像として実際に出てきそうな越中さんのプラン。日記のような形で進められる田中さんの版画作品のプランも、今回のレジデンスに相応しいということになりました。どの方も未知の可能性を秘めており、まわりのみんなと違う色をまとっているようなところを評価しました。どこまで街を体感して制作し、発表となるか待ってみたいと思います。
港 千尋氏[写真家、著述家、多摩美術大学情報デザイン学科教授]
イメージの発生や記憶の関係などをテーマに広範な活動をつづけている。主著『記憶』(講談社 1996)でサントリー学芸賞 展覧会『市民の色』(2005)で伊奈信男賞を受賞。第52回ベネチアビエンナーレ日本館コミッショナー、第12回台北ビエンナーレ共同キュレーターなど国際展のキュレーションも行い、あいちトリエンナーレ2016では芸術監督を務めた。著書に『芸術回帰論』(平凡社新書 2013)、『ヴォイドへの旅』(青土社 2013)、『風景論』(中央公論新社 2018)、『インフラグラム』(講談社選書メチエ 2019)など多数。
【審査コメント】
藤沢市アートスペースは、規模としてはそれほど大きなものではないが、今回は応募総数80件という数もさることながら、内容的にもレベルの高いプロジェクトが集まっており、すでに堂々たるレジデンスプログラムになってきたという印象をもった。応募者の年齢に幅があり、また神奈川県外からの応募が過半数を占めたことも印象的で、それはこれまでここで制作され発表された作品が、評価され、国内で知られてきているという証しでもあるだろう。どのプランも考え抜かれており、説明文からは制作者の情熱が伝わってくる。それだけに審査は簡単なものではなかったが、知的にも感覚的にも大いに刺激される、エキサイティングな選考となった。
最終的に入選したプランは、制作の場所性や滞在の時間性を反映する、それぞれ実にユニークで面白いものである。田中氏の版画、下大沢氏のコンクリート、越中氏の映像、国分氏の草木染めと、使われる方法もメディアも大きく異なるが、それはとりもなおさず、今日のアートの多様性を反映しているだろう。個人的には、アーティスト・イン・レジデンスの面白さは限定された場所と時間が、無限定の創造行為を生み出すところにもあると思う。日常的な生活空間のなかにある藤沢市アートスペースは、毎日市民の顔が見えるところも特徴で、それぞれの作家にとってはそれが刺激となり、同時にチャレンジングな条件でもあるだろう。制作期間は夏の暑い時期に重なるが、風通しのよい辻堂の地で、これらのプランがのびのびと実現されることを心から期待している。
〈入選アーティスト〉
5月16日に、Artists in FAS 2019 の入選アーティストを選出する審査会を行いました。
審査員2名が滞在制作および作品プランが記入された応募書類等に目を通し、審査員がそれぞれ10名程を候補者として選出しました。
協議の上、さらに絞り込んだ上位7名から、最終的に入選者4名を決定しました。
◼︎入選(敬称略、50音順)
国分 想(こくぶ・はるか、1978年生まれ) シドニー、オーストラリア在住
越中 正人(こしなか・まさひと、1979年生まれ) 神奈川県在住
下大沢 駿(しもおおさわ・しゅん、1993年生まれ) 神奈川県在住
田中 唯子(たなか・あいこ、1991年生まれ)東京都在住
◼︎応募総数
80件[神奈川県内33件(うち藤沢市内6件)、神奈川県外46件、国外1件]
「Artists in FAS」とは
藤沢市アートスペース(FAS)が実施するアーティスト・イン・レジデンス プログラムで、2016年にスタートし、今年で4回目を迎えます。全国のアーティストから制作したい作品と展示についてのプランを広く募集し、外部審査員による審査のもと、選出されたアーティストに作品制作と展示の機会を提供します。
〈Artists in FAS 2018 成果発表展の様子〉
金沢寿美《テーブル ー新聞紙のドローイングー 》
熊野海《Super Mirage》
藤倉麻子《遊歩道》
二ノ宮久里那《変移》(部分)※会場:ココテラス湘南ビル2F〜4Fの吹抜け
<受付期間>
2019年4月1日(月)〜2019年5月12日(日)[必着]
※郵送、またはFASへ直接持参のみ。
※直接持参の場合は、FASの開館日(10〜17時の間)に来館のこと。
<審 査>
書類選考により入選者4名(組)を決定。
2019年6月4日(火)にFASのウェブサイトにて結果発表。
※展示場所はFASの展示ルーム、レジデンスルーム、ココテラス湘南ビル内共用部分のいずれかになります
<滞在制作期間>
2019年7月2日(火)〜2019年9月22日(日)
※上記期間中のFAS開館日のうち30日間(1日6時間程度)は、FASで滞在制作をすること
<成果発表展覧会>
2019年9月28日(土)〜2019年11月10日(日)
※入選者によるグループ展です。
※休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日が休館)
<入選>
4名(組)
入選者(組)には、滞在および制作補助として30万円を支給します。
※支給方法:事業終了後に本人名義の口座へ振込みとなります。
<応募方法>
受付期間:2019年4月1日(月)〜 2019年5月12日(日)[必着]
◉受付期間内に応募書類を提出してください。
詳細は以下要項をご確認ください
〈応募書類〉
[応募方法]受付期間中に以下の応募書類を提出してください。
① 藤沢市アートスペース「Artists in FAS 2019」申込用紙
※FASで配布しています。以下からもダウンロードできます。
※郵送を希望の方は、FASまでご連絡ください。
※応募は一人1件とします。
② ポートフォリオ(任意)
※A4サイズの用紙、(10枚以内)をクリップ等でまとめ、透明のクリアファイルに入れて提出してください(紙に出力したものに限る)。
※DVDやCD等での画像データの添付不可。
※映像の場合、5分以内に編集したものをCDやDVD(movまたはmp4)で提出してください。Youtubeなどの動画サイトやインターネット上にアップロードしたものは審査の対象になりません。
【申込用紙ダウンロードはこちら】
●Artists in FAS2019_申込用紙 (Word)
●Artists in FAS2019_申込用紙 (PDF)
【参考図面】
●展示ルーム参考図面 (PDF)
●レジデンスルーム参考図面 (PDF)
〈展示場所〉
展示ルーム(約200 ㎡)
レジデンスルーム(約138 ㎡)
ココテラス湘南ビル共用部分(一例)
〈応募に関する注意事項〉
・応募書類はe-mail、FAXでは受け付けません。
・応募書類(①申込用紙、②ポートフォリオ)は返却しません。
〈個人情報の取り扱いについて〉
いただいた個人情報は藤沢市アートスペースにて厳重に管理し、下記目的に限り使用します。
・入選者については審査結果の通知、滞在制作、成果発表展示、図録作成、広報等、Artists in FASの事業遂行に必要な場合
・Artists in FASをはじめとする藤沢市アートスペース主催の事業に関するお知らせ(次年度以降の使用も含む)
・その他藤沢市アートスペースにおいて必要と判断する場合
〈提出先〉
〒251-0041 神奈川県藤沢市辻堂神台2-2-2 ココテラス湘南6F
藤沢市アートスペース「Artists in FAS 2019」係
〈企画・応募に関する問い合わせ先〉
TEL.0466-30-1816 / e-mail: fj-art@city.fujisawa.lg.jp
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