制作·展示支援プログラム「Artists in FAS 2024」
8月29日に、Artists in FAS 2024の入選アーティストを選出する審査会を行いました。
審査員の三沢厚彦氏と三本松倫代氏が滞在制作および作品プランが記入された応募書類等に目を通し、それぞれ十数名程の候補者を選出しました。その候補者の中から審査員が協議し、4名の入選者が決定しました。
■入選(敬称略、50音順)
小山裕紀子(おやま·ゆきこ)神奈川県在住
斎藤英理(さいとう·えり)東京都在住
齊藤美帆(さいとう·みほ)神奈川県在住
伴佳七子(ばん·かなこ)東京都在住
■応募総数
56件[神奈川県内18件(うち藤沢市内4件)、神奈川県外36件]
審査会の様子
「Artists in FAS」とは
「Artists in FAS」(以下、AiF)は、藤沢市アートスペース(以下、FAS)が実施するアーティスト・イン・レジデンス・プログラムです。本プログラムは2016年にスタートし、今年で9回目を迎えます。
FASで制作する作品と展示についてのプランを広く募集し、外部審査員による審査のもと、選出されたアーティストには作品制作と展示のための環境を提供します。アーティストとしてこれまでに追求してきた表現や培ってきた経験を、FASでの滞在制作を通してカタチにしてみませんか。絵画、立体、インスタレーション、パフォーマンス等、表現ジャンルは問いません。
「AiF」は、アーティストの意欲的な創作活動をサポートするとともに、発表の場を提供し、今を生きるアーティストとその作品の魅力を発信します。
<審査評>
三沢厚彦 氏 [彫刻家]
1961年京都府に生まれる。1989年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。2000年動物の姿を等身大で彫像した木彫作品「ANIMALS」シリーズを制作開始。同年より西村画廊(東京)で個展開催。2007‒08年平塚市美術館など全国5館で巡回展。以後、各地の美術館で展覧会を多数開催。近年の個展に、2021年北九州市立美術館、2022年新潟県立近代美術館、2023年千葉市美術館、石神の丘美術館(岩手)など。主な受賞歴に、2001年第20回平櫛田中賞、2019年第41回中原悌二郎賞など。主な作品集に『ANIMALS NO.3』、『ANIMALS/Multi-dimensions』(共に求龍堂)、『動物の絵』(青幻舎)など。パブリック・コレクション多数。神奈川県在住。
藤沢市アートスペース「Artists in FAS 2024」の審査を終えて
この展覧会の公募概要として、藤沢市アートスペースのレジデンスルームで30日以上を規定とし滞在制作を行う。それは公開され、来場者はその場に立ち会うこととなる。
滞在制作を経て、その成果物としての作品を4つの空間(レジデンスルーム、展示ルーム1と2、共有スペース)にそれぞれ展示し、展覧会としての期間が始まる。会期中に各作家によるワークショップも計画され、盛りだくさんの内容と条件に対応しなければならない。今回の公募には56人の応募があり資料を見、読み解くと興味ある内容のものは多数あった。そこで審査にあたり自分勝手に審査基準を設けさせていただいた。「作品のリアリティと場所性」「思考の多様性」「物質と現象性」。それらがこの場において化学反応を起こしながら期待をさらに超えた素晴らしい内容になればよいと思った。
まずは作家各自の作品の方向性やオリジナリティが最重要な要素となるが、今回は4つの空間による各作家による個展という事も必然ではあるが、4名のアーティストが集う展覧会であるという要素も重視しなければならない。それぞれの作家の作品が連動しながら、ここ藤沢市アートスペースにおいて豊かな情報量と発信力のある展覧会として成立させるのか、あるいは公開制作を得て、より有意義な出来事となるような柔軟性を持ちながらつくられていくという、期待も込めて審査に関わった。審査員の神奈川県立近代美術館主任学芸員の三本松さんと協議を重ねて11人の作家に絞り、そこから8人を選出し、最終的に4名の作家が決定した。残りの4名が次点となった。
展示ルーム1‐斎藤英理
映像、写真によるインスタレーション。イルージョンやオブジェクトをモチーフに閃輝暗点という厄介な症状を客観的な距離を持ちながら可視化、共有する試みと幾何学や史実、資料によるリサーチも行い複数のストーリーを紡いでいく試みも興味深い。
展示ルーム2‐齊藤美帆
彫刻、立体作品によるインスタレーション。多くの子どもが出入りするココテラス湘南ビルに一見遊具を思わせる様な大きなオブジェを存在させる。親しみやすいと思われる色味が選択され、構造的で単純化された形態はある種の無機質さと冷たさも感じさせる。作者の意図した思いと場における作品との関係性に整合性があるのか、あるいは乖離し差異を生むのか、両者も含め興味深い。
レジデンスルーム‐伴 佳七子
彫刻、ミクストメディアによるインスタレーション。「見ること」をテーマに藤沢の地域で様々な現象やモチーフの取材を行い、素材も石、植物、砂鉄、映像など多岐にわたる。場の記憶や記録、その広がりを通して関係性で成り立つ世界を制作する。我々は全ての世界に通じる、そんな場に立ち会いたいと願う。
ココテラス湘南ビル共有スペース–小山 裕紀子
絵画、平面領域を中心としたインスタレーション。和紙を素材とし、折り紙の手法を用い、インクによるドロッピングや、たらし込み、絵筆によるドローイングにより描かれた形態や色彩が、開かれた際に予測外の図像として現れる。どこまでを偶然的な出来事と捉えることも興味深いが、公共スペースという多様性に満ちた空間に対する作品の設えや展示の方法も公開制作の場において試行錯誤し、現場で決定していく。今回のプログラムにおいて非常に興味深い姿勢であるという印象をもった。
以上が決定作家であるが、藤沢市アートスペースにおいて、各作家の作品が展開し、展示され、新たな関係性を築いてくれることを期待している。
三本松倫代 氏 [神奈川県立近代美術館 主任学芸員]
1974年東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻表象文化論コース後期博士課程満期退学。専門は近現代美術、表象文化論。2003年より神奈川県立近代美術館で学芸員として勤務。主な担当展覧会に若江漢字、山口勝弘、畠山直哉、坂倉準三、内藤礼、アントニン&ノエミ・レーモンド、岡崎和郎、桑山忠明、モホイ=ナジ、村山知義、矢萩喜從郎、原田直次郎、石田尚志の個展、企画展に「みえるもののむこう」(2019)、「100年前の未来 移動するモダニズム 1920-1930」(2023)など。
本プログラム(以下AiF)の選考にあたり感じた困難を、反省とともにまず述べたい。
滞在・制作の環境と、発表環境の多様性とそれゆえの制約。滞在日数や準備期間の使い方、考え方。展示空間としてのFASの可能性、題材としての藤沢という場所、作品以外の「関連企画」への目配り。複雑な立体パズルのように選考要素が組み上げられ、選考時間内に全員のプランを深く読み込み、綜合的に判断できたか、正直に言って覚束ない。
過去作品の完成度が高く、提案も安定していながら、AiFでの制作根拠として掲げられた場所への“寄せ方”(必然性というべきか)に薄弱あるいは迎合を感じたプラン。土着の原料、取材対象など、サイト・スペシフィック性に呼応しているが、そこから「正しさ」以上の面白さを想像しがたいプラン。作品例も展示案も真っ当だが関連企画の実効性や独創性で次点となるプラン。これは応募者の問題でありつつ、主催者・選考者の問題でもある。アーティストに交流プログラムまで提案させることは過剰な要求ではないか? FASあるいは藤沢という場所は、創造の源泉となりうる場の力を提供しうるのか? 「作品を見てみたい」以外の諸条件で現代美術の場を想像し選考することは、本当に面白いのか。
むろん、やや素朴なこの逡巡を超える手段として、複数名による合議審査があり、過去の事業を支えてきたFASスタッフの経験と助言があり、なにより、可能性と魅力に富んだプランがある。斎藤英理さんの作品案は個人的な生理現象を違和感なく・否応なく滞在制作へとつなぐ強さがあった。齊藤美帆さんの寡黙な造形には、これを来館者との対話やワークショップにひらいていく冒険性を期待した。伴佳七子さんの石彫と繊維による硬軟性と地場の交錯は展示空間の外光と如何に対峙するか、そして小山裕紀子さんのパブリックスペースへの介入において立体と映像の共存をどのように謀れるか、いずれも興味深い。
最後に改めて、入選者と一部の選外者の差はごく小さく、今後も注目したい作家の方々が選外にも存在したことを書き添えておきたい。
<審査>
審査員が書類選考によりすべてのプランに目を通し、以下の項目に基づき協議して入選 4名(組)を決定。
※審査内容についてのお問い合わせには応じられませんのでご了承ください
<募集期間>
2024年7月2日[火]~8月12日[月・振休]
終了しました。
<応募締切>
2024年8月12日[月・振休] 17:00必着
終了しました。
<入選>
4名(組)
入選者(組)には、滞在および制作補助として45万円を支給します。
※支給方法:事業終了後に本人名義の口座へ振込みとなります。
<滞在制作期間>
2024年10月5日(土)〜12月27日(金)
※上記期間中、30日以上(1日6時間程度/9:00〜19:00の間)FASで滞在制作をすること
※別途、展示設営期間あり
<成果発表展覧会>
2025年1月11日(土)〜2025年3月16日(日)
※入選者によるグループ展です。
※休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日が休館)
※開館日や閉館時間は変更になる場合があります。
<応募方法>
◉募集期間内にEmail、郵送(宅配便等も可)、FASへ直接持込のいずれかの方法で、「藤沢市アートスペース〈Artists in FAS 2024〉申込用紙」を提出してください。
募集期間:2024年7月2日 [火]〜8月12日 [月・振休]
Email 8月12日[月・振休]17時まで ※締め切り間際は回線が混み合うことが予想されますので早めの応募をお勧めします
郵送 8月12日 [月・振休]必着
直接持込 8月12日 [月・振休] 17時まで(開館日の10〜17時で受付)
※データや書類の不備等がある場合は審査できません。再提出する場合、締め切り日時以降の受付はしませんのでご注意ください。
◉応募の際は、以下要項を必ずご確認ください
AiF2024募集要項(PDF)
<申込書類>
こちらからダウンロードできます。 ※FASでも配布しています。
※PDF、docxはどちらか使いやすい方をお使いください。
・応募は一人(組)一件とします。
・申込用紙のフォーマット(A4サイズ10ページ)を使用してください(縦横不問)。
・映像の場合、5分以内に編集したものをYouTubeなどの動画サイトにアップロードし、動画のタイトルと閲覧可能なURLを申込用紙に明記して下さい。アップロードの際、動画タイトルには必ず応募者名またはグループ名を入れ(例:《FUJISAWAYOSHIKO_私の休日》)、プライバシー(公開)設定は「限定公開」としてください。
・DVDやCD等記録メディアでの画像や映像の提出は受け付けません。
[応募に関する注意事項]
・Emailで提出する場合、申込用紙(ポートフォリオ含む)は7MB以内にまとめ、PDF形式で保存してメールに添付してください。また、ファイル名には必ず応募者名またはグループ名を入れてください。
(例:〈FUJISAWAYOSHIKO_AiF2024申込用紙〉)
・申込用紙は返却しません。
〈参考図面・画像〉
〈応募書類提出先〉
[Email]fj-art2@city.fujisawa.lg.jp ※件名は「Artists in FAS 2024 応募//氏名」としてください
[郵送・持込]〒251-0041 神奈川県藤沢市辻堂神台2-2-2 ココテラス湘南6F
藤沢市アートスペース「Artists in FAS 2024」係
〈応募に関する問合せ先〉
[TEL]0466-30-1816
[Email]fj-art2@city.fujisawa.lg.jp ※件名は「Artists in FAS 2024問合せ」としてください
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